生成AIを使えば、これだという正解をすぐに出してくれる——
そんな期待を抱いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、情報や選択肢が増えるほど、「では何を選ぶのか」という意思決定は、むしろ難しくなることがあります。
そうした中で帝人株式会社様では、AKCELIを「答えを出すツール」ではなく、意思決定の質を高めるための“思考インフラ”として活用するという使い方を見出しました。
今回は、AKCELI導入の背景から、意思決定プロセスがどのように変化したのかについて伺いました。
事業内容と、その中でのミッションについて教えてください。
伊藤さん:私が所属するRIM事業企画推進部は、再生医療および埋込医療機器の領域において、研究開発と事業開発を一体で捉え、事業化を推進する役割を担っています。特に重視しているのは、短期的な収益と長期的な成長のバランスです。事業子会社とコーポレート機能、それぞれの特徴を活かし、継続的に成長するためのロードマップを構築することが私の役割です。
「アイデアを増やす」から「意思決定を変える」ツールへ
――AKCELIを導入されたきっかけを教えてください。
伊藤さん:今回、技術ロードマップ作成に取り組むにあたって、メンバーの経験や知識に偏りがちなブレインストーミングを脱却し、フラットで広がりのあるアイデアを引き出す課題意識がありました。AKCELIを試したところ、従来の検索やブレインストーミングでは得られなかった視点やアイデアが瞬時に多数提示されました。「このレベルのアウトプットが得られるのであれば、単なるアイデア出しにとどまらず、意思決定のプロセスそのものを変えられるのではないか」という期待が高まり、導入を決定しました。
アイデアの量ではなく、「判断軸」が言語化されるようになった
――実際に使ってみて、どのような変化がありましたか?
伊藤さん:AKCELIを使い始めたことで、用途探索や技術融合の候補が具体的かつ多数提示され、発想の幅を一気に広げるインプットを得ることができました。重要だったのは、提示されるアイデアに触れる中で、「このアイデアには納得感があるか」「なぜそう感じるのか」といった感覚が自然と生まれ、その感覚を言語化していった点です。
これまで暗黙知だった「自分たちは何を重視して判断しているのか」が整理され、単にアイデアを評価するのではなく、意思決定に使える判断軸として明確になっていきました。
坂本さん:技術・研究開発の立場から見ても、AKCELIは特定の前提や立場に偏ることなく、フラットに情報を提示してくれる点が非常に有効でした。そのため、自分たちだけでは気づけなかった視点の情報にも触れることができ、技術検討の視野を大きく広げてくれたと感じています。また、「誰が言ったか」に左右されることなく、客観的に判断できる点も大きなメリットです。
さらに、分野やソリューション、技術の組み合わせといった切り口で情報が整理された状態でアウトプットされるため、情報量の多さに埋もれることなく、それぞれの切り口に沿った議論を進めることができました。
異なる専門分野のメンバーが、同じ前提で議論できるようになった
伊藤さん:私がバイオロジー(生物学)出身で、チームにはマテリアル(材料科学)の専門家もいます。専門分野が異なるメンバー同士では、同じ技術を見ていても、前提や解釈が揃わないことが少なくありません。その点、AKCELIは技術情報を単なる特性の羅列としてではなく、価値や意味合いの観点から整理して提示してくれます。そのため、専門性の異なるメンバーであっても、同じ前提に立って議論を始められるようになった点は、非常に大きな変化でした。
アイデアを個別ではなく「群として捉える」ことで、意思決定につながる視点が得られた。
――出力されたアイデアの評価の仕方も工夫をしていたようですね。
伊藤さん:AKCELIのアウトプットを個々のアイデアの良し悪しで判断するのではなく、全体を「群」として俯瞰する見方を重視しました。そうすることで、自分たちが当初有力だと考えていたアイデアが、実は応用の広がりに乏しいことや、逆にあまり期待していなかった領域が多岐にわたる発展可能性を持っていることに気づくことができました。このように評価が相対化されることで、「どの領域を深掘りすべきか」「次に意思決定すべき対象は何か」といった判断に直結する視点が得られました。
その整理の一つが、このマッピングです。
このマッピングは「効能(縦軸)×適用部位(横軸)×競合数(色分け)」といった切り口で構成し、用途探索全体を俯瞰できる形で整理しました。
具体的には、
• 競合数が少なく、かつ複数の効能にまたがって応用可能な領域
• 適用部位の広がりが見込め、事業拡張につながりやすい領域
といった観点を、人の目で判断できる状態を作ることを意図しています。
その結果、感覚的な「良さ」ではなく、構造を踏まえて注力すべき分野を絞り込むことができ、技術ロードマップとしての意思決定につなげることができました。

アイデアをマッピングし、色分けすることで注力分野を視覚的に判断
「AKCELI × 汎用AI × 人」で、発散と収束のサイクルを回す
――AKCELIを使いこなすうえで、人の役割と、どう分けて考えましたか?
伊藤さん:用途や技術を幅広く発散させる役割をAKCELIが担い、情報の整理・構造化には汎用AIを使い、その間の判断と意思決定は人が担うという役割分担です。
まずAKCELIで技術や用途のアイデアを広く具体化し、そのアウトプットを見ながら、人が「どの切り口で整理するか」「どの視点に納得感があるか」を判断します。
その切り口をもとに汎用AIで情報を整理・構造化し、全体を群として俯瞰できる状態を作ります。
最後に、人がそのマップを見て攻め所を判断し、注力領域を決めたうえで、再度AKCELIで深掘りします。このように、二種類の生成AIを役割に応じて使い分け、人が意思決定を担う形にすることで、発散と収束のサイクルをスムーズに回せるようになりました。

坂本さん:アウトプットの一つひとつが正しくても、その全てを実行することはできません。従って人が介在して、どこに注力すべきかを判断する必要があります。スコアリングも有力な情報ではありますが、それだけで決めるのではなく、プラスアルファの判断が必要になります。たとえば我々が持つ技術の深いノウハウから導き出される見解や、事業の方向性とアウトプットの適合性といった判断軸で優先度を決定します。こうしたサイクルを回していくことが重要だと考えています。
AIの結果が、「10年検討してきた技術の成熟と次なる展開」を示した
――現場での具体的なエピソードがあれば教えてください。
伊藤さん:象徴的だったのは、用途探索の結果を一通り眺めた後に、長年現場で用途探索を続けてきた担当者から発せられた、
「これまで10年以上検討してきたアイデアがしっかりと網羅されている。この技術が既存の枠組みの中で提供できる価値は、十分に整理しきったのではないか」という言葉です。
AKCELIが示した結果と、現場で積み上げてきた実感が合致したからこそ出た言葉でした。この一言をきっかけにチーム全体で「延長線上の改善ではなく、応用範囲を一段階広げるべきだ」という共通認識が生まれ、未知の領域を探る議論へと一気にフェーズが切り替わりました。
坂本さん:AKCELIを導入した当初は、「AIに事業企画ができるのか」と半信半疑の声もありました。
本来、技術系の人間は事実に基づいてロジックを積み上げていく傾向があります。そのため、AKCELIが提示する技術の新しい掛け合わせや、異業種での用途展開の仮説は、一見すると突飛に見えるものもあったと思います。しかし、そうしたアウトプットが、結果的には思考の壁を壊す役割を果たしました。戸惑いよりも、新しい刺激を与えられたような面白さを感じたメンバーが多かったのではないでしょうか。
3ヶ月かかっていた検討が、2週間〜1ヶ月に短縮された
――AKCELIにより新たな事業の方向性の発見につながったのですね。その他、現場で見られた、導入による定量的な効果はありましたか?
坂本さん:AKCELI導入前の上半期に同様の技術ロードマップ検討を行った際は、ブレインストーミング・情報収集・議論・合意形成に至るまで約3ヶ月かかっていました。AKCELIを活用してサイクルを回してみますと、同等のクオリティを維持しつつ、期間を約2週間〜1ヶ月に短縮できました。
伊藤さん:期間だけでなく、進め方そのものも大きく変わりました。以前は、できるだけ多様な視点を取り込むために、多くのメンバーを集めて議論を行っていました。その分、日程調整やファシリテーションの負荷が大きくなっていたのも事実です。AKCELIを活用することで、アイデアをゼロから出す作業にかける時間を短縮でき、その分、本質的に議論すべきポイントに時間を使えるようになりました。

部門内議論の活性化(RIM事業企画推進部長 垣立 浩氏、RIM事業戦略推進部 笠原 新平氏を交えて)
個人の調査力に依存しない、「一定の型のアウトプット」
――Web検索など従来の調査手段と比べて、どのような違いを感じますか?
坂本さん:Web検索や文献調査といった従来の手法は、特定のテーマや仮説が明確な場合には非常に有効です。一方で、新規領域の探索や技術ロードマップ検討の初期段階では、「何を調べるべきか」「どこまで視野を広げるべきか」そのものが定まっていないケースも少なくありません。
その結果、情報の取捨選択が、個人の経験や思考の癖に強く依存してしまうという課題がありました。AKCELIでは、既存資料をインプットするだけで、用途、技術の掛け合わせ、市場情報といった観点が、一定の型で整理されたアウトプットとして提示されます。
これにより、個人の調査力に依存することなく、チーム全員で議論を始めるための共通の出発点を作りやすくなりました。
現在は、AKCELIを探索初期の視野拡張や論点整理に活用し、Web検索や文献調査は、その後の深掘りや裏取りに使うといった形で、それぞれの役割を明確に使い分けています。
「答えを出す」のではなく、「思考を刺激するパートナー」へ
――ありがとうございました。最後に、今後の展望とAKCELIへの期待をお聞かせください。
伊藤さん:AKCELIには、これまで通り、思考を刺激するツールとして進化してほしいと考えています。
必ずしも答えを出すことが目的ではなく、人の思考を後押ししながら発散と収束のサイクルを回していく、インフラとしての強みを、さらに磨いていってもらいたいです。
将来的には、チームで設定した判断軸をもとに、AKCELIのアウトプットが2軸・3軸のマップ上に自動で整理されるようになれば、議論のスピードと質は、さらに高まると感じています。
坂本さん:今後は、このロードマップに沿って3ヶ月、半年と活動した結果を、技術状況や世の中の変化にあわせて定期的に見直していくことが重要になります。
将来的には、自社の活動情報を入力することで、最新の技術動向を踏まえたアップデート案が提示されるような、双方向のツールへと進化すれば、活用の幅はさらに広がると思います。こうしたサイクルを継続的に回し続けるパートナーとしてAKCELIには期待しています。
また、今後は事業企画だけでなく研究所、さらには他の事業部門にもこの仕組みを広げていきたいと考えています。AIを介して組織内の多様な知見と異分野の知識がつながることで、より大きなイノベーションが生まれる土壌を築いていきたいですね。
まとめ
帝人株式会社RIM事業企画推進部では、AKCELIを単に「答えを出すツール」としてではなく、チームの判断軸を磨くための「思考インフラ」として活用しています。
「AKCELI × 汎用AI × 人」という役割分担を明確にしたことで、発散と収束のサイクルを高速に回せるようになりました。
その結果、「単にアイデアを増やす」「誰かの正解に従う」のではなく、「自分たちで納得して決める」ための、DXを活用した意思決定プロセスを実践した事例と言えるでしょう。
また、お二人が共通して強調していたのが、ツールそのものではなく「ツールの使い方」の重要性です。
AKCELIを単なる評価対象として捉えるのではなく、自分たちの課題を解くための“パートナー”として使い切る。その前提に立つことで、活用の深さは大きく変わるといいます。
AKCELIの導入と、それによって自社のR&Dや新規事業開発プロセスがどのように進化するか、気になる企業・ご担当者様は、ぜひ以下より資料請求をしてみてください。担当コンサルタントが、課題のヒアリングからソリューションまでをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

本事例のポイント
・意思決定の質を高める「思考インフラ」として活用
・AIの叩き台で発言しやすさが向上
・異分野メンバーの目線が揃う
・3ヶ月 → 最短2週間に短縮



